「噛みしめ」や「歯ぎしり」と聞くとすぐストレスを連想する人が多いようですが、「噛みしめ」や「歯ぎしり」は多かれ少なかれ誰でもしている一種のくせと考えて良いと思います。ですから、特に問題を起こさない限り、放置しても構わないのですが、時には次のような問題を起こします。
- 歯への障害/歯の磨耗・歯の破折・歯がしみる・噛むと痛い等
- 歯周組織への障害/歯ぐきがさがる・歯周病(=歯槽膿漏)
- 顎関節への障害/顎関節痛・開口障害・カックン音
- 全身への障害/顔面痛・頭痛・肩凝り・腰痛
- その他/舌痛症・むちうち症状・倦怠感
これらの症状のすべてが、「噛みしめ」や「歯ぎしり」からくるわけではありませんが、これらの症状の大きな誘因になっているので無用な悪いくせはなくしておく方が良いと思います。このくせは眠っている時とか、何かに夢中になっている時とかに起こるので気づきにくいし、治りにくいものです。
治すためにマウスピースを入れる方法もありますが、道具に頼るといつまでもそれを入れていなければならないし、やめればまた戻ってしまいます。あなた自身が「噛みしめ」や「歯ぎしり」に気づいて、あなた自身が治すしかないのです。あなたが本気になって治す気になれば意外と簡単に治っていくものです。
では、その方法をお教えします。
STEP 1 「噛みしめ」ていない=リラックスしている状態を覚えましょう。
- (1)まず、思い切り噛みしめてみてください。1~2秒後に、フッと顎の力を一度に全部抜いてみて下さい。上下の歯が僅かに離れるでしょう。その位置が理想的なリラックスした位置です。もう一度やってみましょう。
- (2)次に、思い切り大きな口を開いてから、今度はガクンと脱力してみてください。
たぶん、(1)の時とほぼ同じ位置に顎が閉じるでしょう。(顎の関節が痛くて開けられない人は無理せず開けられる所まででいいです。)
この時、呼吸をいっしょに合わせると良いと思います。つまり、力を入れるときに息を吸って、いったん1~2秒止めてから、脱力する時に一気に吐くのです。
もう一度やってみましょう。
昼間も、寝ているときもいつもこの状態になっていればいいのです。一流のベテランのスポーツ選手はよくこの状態を心がけています。スケートのオリンピック金メダリストの清水宏保選手もロケットダッシュの秘訣は「スタート前の顎の脱力だ」と言っていました。
STEP 2 「噛みしめ」ている=リラックスしている状態を覚えましょう。
仕事等に夢中になっている時、ふと気がつくとしっかり噛みしめていたり、舌を吸いつけていたりしていることが誰にでもあります。あなたは気づいたことがありますか?
● YES
そんな時、肩を上下させ、首から上の力を思い切り抜いて、ステップ1でやったように脱力して上下の歯を離してから、また仕事に向かって下さい。
● NO
気づいたことがない人もきっとしているときがあると思いますので気をつけて見てください。
噛みしめている状態は意外と気づきにくいものです。気づく方法として、普段よく使う道具にマジックインクとかシールとかで目印をつけて、それを見たら思い出すようにするとよいです。主婦でしたら包丁の柄とか、事務の多い人はペンやキーボードなどに。また、運転する機会の多い人はハンドルなどに目印をつけておきましょう。
STEP 3 問題は夜眠っている時のことです。
眠っている時のことなど、コントロールできないと思っている人が多いと思います。しかし、「明日の朝4時に起きなければいけない」と思って寝ると、不思議とその時刻に目が覚めるという経験をしたことはありませんか。眠っている間も、体内時計と「起きなければいけない」という意識が共同作業をして、正確にその時間に目が覚めるということが私たちにはできるのです。
そんなむずかしいことができるのですから、上下の歯を合わせないようにリラックスして眠るなどという作業は、「その気」になりさえすれば意外と簡単にできるものなのです。成功の秘訣はあなたがどれだけ「その気」になるかにかかっているのです。
1.前準備
- (1)枕を低めにしましょう
後頭部の一番出っ張ったところより首の付け根近くに枕がくるようにします。
そうすると頭が少し上を向くので、口が開きやすくなるからです。おもに仰向けに寝る人は、バスタオルをロール状に巻いて長い枕をつくるのも良いでしょう。横向きに寝る人は、背筋がまっすぐになる高さにしてください。 - (2)布団に入ったら何も考えないようにしてください
布団の中は眠るだけの所と決めてください。もし、どうしても考える事があればもう一度、布団から出て考えてください。あるいは、朝目覚めてから布団のなかで考える習慣をつけるとよい考えがでてきます。
2.本番
- (1)布団に入ったら、仰向けになって少し手も足も開き気味にします。
- (2)その後、ステップ1でやったように、顎を脱力し歯を離した状態にします。
- (3)次に、体全体もリラックスさせます。
まず、肩に思い切り力を入れて、1~2秒してから突然脱力してください。この時も呼吸を合わせてください。
同じように、胸、腹、太ももの脱力をして、最後に足の先からその日の全ての疲れとストレスを追い出してやるような気持ちで大きく息を吐き出しながら足の脱力をします。何回もやっていると、手のひらや足の裏あたりが少し温かくなった感じがしてきます。また、掛け布団が今までより重く感じたらうまく脱力できた証拠です。(足先を上に向けるのに苦労なほど掛け布団が重く感じたら、もう少し軽いものに替えましょう。) - (4)最後にもう一度、顎の力が抜けていることと、上下の歯が離れていることを確かめて眠りに入ります。このまま一晩中眠ってくれるといちばん良いのです。
3.自己暗示
呼吸に意識を傾け、吐く時に脱力するのを繰り返しながら、手足やお腹が温かくなってくるのを感じてください。
また、吐く時に、自分がリラックスできる言葉を唱えてみましょう。たとえば「リラックス、リラックス」「いい気分、いい気分」「楽だ、楽だ」等何でもよいです。また「噛んではいけないぞ」「歯を合わせない」「開いて寝る」等を言い聞かせます。
そして次の朝、今ある全ての症状が無くなって、すっきり爽やかに目覚めるあなたの姿をイメージしながら眠りに入ってください。 自己暗示ができれば、症状のほとんどは劇的に改善します。
4.次のようなことがありませんでしたか?
- Q 1 口を開いて寝たら喉が乾くのですが?
- A 1 次の朝、口の中が乾いているようだったら喜んで下さい。自己暗示が、幾らかでもできていた証拠です。口が乾いたからといってすぐに何か障害があるわけではありません。自己暗示ができるようになったら、今度は、上下の歯は噛み合わせずに唇だけ閉じるようにしてください。
- Q2 食いしばっているのに気付いて目が覚めたり、気になってときどき夜中に目が覚めて寝不足になってしまいました。
- A2 夜中に目が覚めるようであればやはり、喜んで下さい。自己暗示ができてきた証拠です。「噛みしめ」や「歯ぎしり」はごく浅い睡眠の時にすると言われていますので、さほど睡眠不足にはなっていません。
- Q3 自己暗示がうまくいっているかどうかわかりません。
- A3 自己暗示が成功している度合いによって、はじめは、噛みしめた後に目が覚めるようです。やがて、噛みしめている時に目が覚め、もっとうまくできるようになると、噛みしめようとする前に目が覚めます。ほとんどできるようになると、朝目が覚めた時に、夜中じゅうしていなかったことに確信がもてるようになります。
- Q4 「噛みしめ」や「歯ぎしり」、をするのではないかと気になって、かえってストレスになってよく眠れませんが…
- A4 負担になるほど深刻にならないで下さい。「噛んではいけないんだぞ」などとあまり強く言い聞かせないで、穏やかな顔をしている自分をイメージするようにして、リラックスして眠ることに重点を置いてください
- Q5 ぐっすり眠ってしまい、自己暗示がうまくできませんが?
- A5 「絶対この癖を止めるんだ」という気持ちをもっと強く持って下さい。また、眠り込む時に「絶対上下の歯を合わしてはいけないんだぞ」と強く言い聞かせてみてください。それでもうまくできなければ、一時的に寝るときだけ使うマウスピースをつくってさしあげます。
歯ぎしり・くいしばり:
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